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僧帽弁閉鎖不全症

僧帽弁閉鎖不全症

多くの犬種に発生する可能性のある心臓の病気です。
左心房と左心室の間に存在する僧帽弁に変性が生じたり、弁と心室をつなぐ腱索が切れたり伸びたりすることにより血液の逆流が生じ、徐々に悪化していきます。症状は病態により様々ですが、運動不耐、発咳、失神、重度の場合は肺水腫によるチアノーゼが起こることもあります。このような状態を放置すると死亡することもあります。

お薬による内科的な治療が一般的ですが、重度になると肺水腫を繰り返し、酸素室から出られなくなることもあります。最近では人工心肺装置を使用した開心術により改善する例も報告されています。

症例1

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル 9.7kg
昨晩から呼吸が苦しそうとの事で来院。
聴診上、心雑音に加え呼吸音が重度であったため胸部レントゲン検査を始めとした心臓検査を実施しました。

レントゲン検査
胸部側面像
mr-lat-1

胸部背腹像
mr-vd-1

胸部側面、背腹ともに肺野の不透過性亢進所見、心臓陰影の拡大が認められました。
心電図検査において不整脈は認められませんでした。

心臓超音波検査において、僧帽弁閉鎖不全症が非常に重度であるということが分かりました。

心臓超音波検査
mr-echo2
左心室から左心房への血液の逆流が見られました。
mr-echo1
また、重度の左心房拡張が見られ、左心房圧の上昇が示唆されました。

これらの検査所見より、本症例の呼吸困難の原因は僧帽弁閉鎖不全症による肺水腫と診断しました。治療には利尿薬、強心薬、血管拡張薬などを複数組み合わせて治療を開始しました。
3日後の再診時には呼吸状態は改善し、胸部レントゲン検査においても肺水腫は改善傾向でした。

治療後のレントゲン検査
胸部側面像
mr-lat

胸部背腹像
mr-vd